搬送システムの設計と制御

1. 半導体生産システムにおける自律無人搬送車の分散型経路計画法

半導体工場における搬送システムでは, AGV(Automated Guided Vehicle)間の衝突やすれ違いをなくし, 搬送時間を最短とする経路計画を迅速に作成することが求められている. 本研究では, 複数台AGVの搬送経路計画問題を混合整数計画問題として定式化し,各AGVが情報交換と各AGVの経路計画の最適化を繰り返すことにより,総搬送時間を最短とする搬送経路を作成する分散型最適化法に関する研究を行っている.提案手法は143ノードから構成される搬送経路において15台のAGVの搬送経路を双対ギャップが5%以内の解を約5秒以内の計算時間で導出することができる.さらに,システムの柔軟性という観点から最適化なシステムのあり方について研究している.

2. 遅延外乱に対する自律無人搬送車の分散型経路計画法

AGVの経路計画法に対する従来研究のほとんどは, すべてのAGVが経路計画システムによって導出された搬送スケジュール通りに走行する条件下での経路計画問題を対象としている. しかしながら, 現実の搬送環境下では, 搬送要求のタイミングのずれやタスク遅延, 走行遅延により, 想定していなかった衝突・干渉が生じ, 頻繁に再経路計画を行う必要が生じる. そこで本研究では,搬送システムにおける安全性を確保するために, いわゆる不確実性を考慮した複数台 AGVの分散型経路計画法を研究している.

3. 生産と搬送の同時最適化

半導体工場における生産システムでは, AGV間の衝突や干渉のため, 搬送要求のAGVへの割り当てや搬送経路の選択によって, 工程間の搬送に必要となる搬送時間が時々刻々と変化し, スケジュール作成時に工程間の搬送時間を正確に見積もることは難しい. したがって, 生産スケジュールと搬送要求の搬送車への割当てや互いに衝突のない搬送経路計画を同時に考慮して最適化することによって, 生産スケジュールと搬送経路計画の効率化を実現することが望まれる. そこで, 本研究では, 同時最適化を目的とした生産スケジューリングと搬送経路計画の決定問題を研究している.

4. 倉庫の運用最適化

倉庫運用における製品配置計画問題とは, 製品の入出庫要求が与えられたとき, 倉庫内製品の配置換え回数と, 製品の向先単位での集約度を向上させるように, 倉庫における製品移動の作業列を決定する問題である. 本研究では, 倉庫製品配置計問題に対して, 実用的な計算時間で良好な解を得ることができるビーム探索を用いた効率解法を提案している. 提案するビーム探索法では, 予め与えられる将来の入出庫要求の情報を利用したヒューリスティクスを利用して, 探索範囲を限定することに特徴がある. 提案手法によって得られた解と, 混合整数線形計画問題を解くことによって得られた最適解との比較を行うことにより, 提案手法の有効性を検証している. 提案手法は実際の倉庫における1ヶ月間の運用に相当する約3000個の作業からなる大規模問題に適用可能である.