サプライチェーンマネージメント

サプライチェーンマネジメントとは?

21世紀社会における重要課題は,持続可能な循環型社会の構築です. 日本では大量生産-大量消費-大量破棄の時代は終わり, これからの社会においては, 循環型社会の構築という背景の下で, 環境負荷という要素を考慮し, リサイクルを含めた製品のライフサイクル全体の地球環境を重視して, 資材調達から製造, 流通, 販売までの最適化を実現していく必要があります. 例えば, 機械製品を設計する際でもリサイクルのしやすい原料の選択, リサイクルしやすい(分解しやすい)製品設計, リサイクル費を考慮した製品の価格付けなどが重要となってきます.

サプライチェーンとは, 顧客-小売業-卸売業-製造業-部品・資材サプライヤーなどの供給活動の連鎖構造を意味します. サプライチェーンマネージメント(Supply Chain Management)とは, 「不確定性の高い市場変化にサプライチェー ン全体を機敏に対応させ, ダイナミックに最適化を図ること」です. 具体的には, これまで部門ごとの最適化, 企業ごとの最適化にとどまっていた情報, 物流, キャッシュに関わる業務の流れを, サプライチェーン全体の視点から見直し, 情報の共有化をビジネス・プロセスの抜本的な変革を行うことにより, サプライチェーン全体のキャッシュフローの効率を向上させようとすることを意味します.

それでは, 私たちのグループのサプライチェーンマネジメントにおける取組みを紹介しましょう.

サプライチェーン最適化手法に関する研究

サプライチェーンの最適化法として代表的な手法は, 離散事象シミュレーション技法を組み合わせた最適化手法や混合整数計画問題に代表される数理計画手法による解法です. 近年の数理計画手法の発展によって, かなり大規模な数理計画問題が解けるようになってきました. 例えば, 製造者とサプライヤとのさまざまな契約形態を陽に考慮して全体の最適化問題を解くことができるようになってきています. この問題は非線形混合整数計画問題(MINLP問題)と呼ばれ, 効率の良い解法アルゴリズムの構築が求められています.

われわれのグループでは, これら合理的なサプライチェーンのモデル化と数理 計画手法の両方のアプローチからサプライチェーン全体の最適化手法を研究しています.
サプライチェーンモデルの例

ブルウィップ効果

ブルウィップとは, 最終製品の在庫の変動がサプライチェーンの下位から製造在庫, 中間在庫, 資材在庫のようにサプライチェーンの上位へ行くにつれて, 変動幅が次第に大きくなっていく現象です. これはサプライチェーンを構成するシステムにおける需要の不確定性やリードタイムのずれ, 情報の遅れによって引き起こされます. ブルウィップを低減するための方法やサプライチェーン全体への影響について検討しています.

複数企業を対象としたサプライチェーンマネジメント ―ゲーム理論を使ったサプライチェーンの解析―

サプライチェーンは複数のサプライヤ, 複数の製造者, 複数の販売者などから構成されます. これらが複数の企業で構成されている場合, 各社は各社独自の指標で意思決定を行います. 複数企業を対象としたサプライチェーンでは不確実な状況下で各社が独自に意思決定を行った場合に互いの戦略が一致するのか, 独自に意思決定をおこなったとしても, 全体の利益を確保するにはどうすればよいか, などがあげられます. これらは, ゲーム理論などを用いて解析されます.